マヤ暦「太陽の紋章」の起源

日本で「マヤ暦」と呼ばれているものの殆どは、米国のホゼ&ロイディーン・アグエイアス夫妻が1990年代に発表した『ドリームスペル(13の月の暦)』(*)に由来を持つもので、マヤ暦そのものではない。

その見分け方については、2011年刊の拙著『マヤのリズム』やブログ【13の月の暦」の大基本】にまとめた通りで、世界ではどのように識別されているのかについても、【「13の月の暦」のアプリ】という記事で具体的に証拠を示した通りである。

この事実を認識する人が少しずつ増えて来たことで、「太陽の紋章」や「銀河の音」という言葉も、実は「ドリームスペル用語」で、マヤ暦には存在しない言い回しである事が、認知されるようになって来た(今回のブログタイトルは主に勘違いしている方に読んでもらうためにワザと間違ったものにしてある)。

「赤い空歩く者」とか「黄色い戦士」などという紋章の呼び方も、1990年までは存在していなかったし、ツォルキンに「青」という色が採用されるようになったのも、それ以降である。つまり、それらの起源は全て『ドリームスペル』にあるのだ。

証拠として、最初に制作された英語版「太陽の紋章」チップと、私も制作に関わった日本語版「太陽の紋章」チップ、そしてそれぞれのマニュアルからコピーライトが記されているページの写真を以下に添付する。

書籍や手帳等では、Power(力),Action(行為),Essenceとして一覧表のようになっている事が多いが、発表当初は「Monkey Plays Magic」というように、ひとつの文になるよう「紋章チップ」のキーワードが構成されていたのが分かる。(単語であり同時に文のようにもなっている)この部分からだけでも、邦訳が困難を極めた事が想像できるだろう。

ところで、チップには見あたらないEssenceに当たるキーワードはどこにあるのだろうか?答えはマニュアルの中の「キンの書」にある。「自由意志に基づく銀河の叙事詩」というサブタイトルを持つ「キンの書」は、決まった形式で記されていて、特定の「太陽の紋章」には必ずそれに対応する言葉がある。例えば「青い猿」なら「幻想」というように。

これが、後にEssenceとしてPower(力)とAction(行為)の後に続けて記されるようになったのである。つまり、「太陽の紋章」に付随する3つのキーワードのうち2つは「太陽の紋章」チップに由来し、残りの1つは「キンの書」にその由来があるのだ。

「キンの書」が形になった時の様子は『2012年への進化 ホゼ・アグエイアス伝記』P205に以下のように記されている。”これらのコードを受け取るとき、彼はその言葉を聞いたのではなく、それらの音や紋章の特徴の数学的秩序づけを感じとったのでした。”

また、同書のP201には『ドリームスペル』を構想していた初期段階の方針が、以下のように記されてもいる。”ホゼは、「マヤ暦」と呼ばれているものから数学的体系を科学的に分離させようとしていました。そうすれば、純粋な数字である、その普遍的な側面を特定できるからです。”

その前後の文章からも、そして実際の『ドリームスペル(13の月の暦)』の構造からも、彼らが意図したのは、数字の比率、フラクタル、数の関係性の中に共時性秩序を見出す事であり、個人の運勢を読み取るためにこの暦を生み出したのではないのが分かる。

尚、ここに記した用語や色に関する事は、歴史や考古学のコーナーにあるマヤ文明関連の一般書を読めば、誰でも確認できるレベルのもので、図書館でも簡単に確認できるはずだ。本気で「マヤ暦」を学ぶつもりがあるのなら、先にそれくらいの事はしておいた方が良い。

そうすれば、『ドリームスペル(13の月の暦)』を勝手に引用改変して、あちこちツギハギした偽モノにひっかかったりする事も無いだろうし、中米マヤの先住民の知恵についても学べるだろう。また、『ドリームスペル(13の月の暦)』を本気で学びたいのなら、パン・ジャパン・ライブラリーから入るのが王道である。

尚、「キンの書」を含む『ドリームスペル』マニュアル全体は、近い将来、WEB上に邦訳が公開される予定だ(訳語の違うものがネットに多く出回っているので訳語に関しても近く整理する予定)。変な解釈が入る前の原典を知れば、どれが後付けの説明かも簡単に見分けられるようになるだろう。(D)

太陽の月24日 12・猿

(*)混乱を避けるために補足しておくと、『ドリームスペル』はその後、アグエイアス夫妻が「13の月の暦に替える平和の運動」として世界を巡る時に『13の月の暦』とも呼ばれるようになった。つまり、この2つは実質的に同じものである。