ハヌマーンの手鏡・その3(KIN7)
「明るくなって来た」ということは、黒い何かを塗られた女性の掌に映像が見え始めたという事だろうか?この時、ウサさんはいつの間にかその女性の斜め後方に移動していて、映像が見られる位置にいたのだが、流石にビール(シャーマン)に注意されて、もと居た位置に戻らされてしまった。
それにしても、厳格なルールがあるよういて、ものすごくプライベートな相談事の場に赤の他人が居ても良いというのは、不思議なバランス感覚である。外国からわざわざ来た人達なのでどうしても見せてほしい、というような事をウサさんが伝えて下さったからかもしれないが、そういうウサさんだって相談者から見れば全くの他人である。
そもそもビールが「いいよ」と言ってくれたから同席できているものの、相談に来ている家族に許可をもらった様子は無い。しかし、彼女たちは別に相談内容を聞かれても気にしていないようだし、それよりも無くなったお金が見つかるかどうか、犯人が誰なのかだけを気にしているようだった。
確かに、ネパール人の距離感は日本人の感覚とは全く違うし、文化的にプライベートという概念が希薄なのかもしれないが、スキを見て掌を覗こうとしていたウサさんの行動にも、ちょっと驚かされてしまった(笑)。以下、悟郎さんとウサさんがリアルタイム通訳をして下さっていた会話を、記憶を辿りつつ記してみたい。尚、Bはビール、Wは自分の掌を見ている若い女性である。
B「何が見える?」
W「木の根元みたいなものが見えて来た」
B「上の方はどうなっている?」
W「よく見えない」
B「集中して」
W「・・・何か目のようなものが見える」
B「それがハヌマーンだ。ハヌマーンが映像を見せてくれる」
ビールの誘導は特に催眠的でもなく普通な雰囲気なのだが、女性がほとんどまばたきをせずに、真正面に構えた自分の掌を見つめ続けている様子から、高い集中状態にあるのがうかがい知れた。
B「何が見える?」
W「人の足が見える。部屋の中みたい…」
B「何人いる?」
W「2人・・・3人、よくわからない」
B「集中して」
W「小さい足。足しか見えない」
B「何をしている?」
W「わからない…部屋の中で何人かが動いている」
女性の様子からは映像は確かに見えているようで、スマホ画面に集中しているのと同じような眼差しを掌に向けつつ、よく見えないものを確かめるようなしぐさをしている。しびれを切らしたように、時折左手にいる家族からも「誰なの?」と声がかかる。しばしこうしたやりとりが続いた後、何と、女性の手がブルブルと震え始めた。それから程なくして、目を見開いたかと思うと、
W「◯△×××!!オー・マイ・ゴッド!!!」と声を震わせ、涙を流し始めたのだ。
最初の言葉は全然わからなかったが、「オーマイゴット」は確かに自分にも聞こえた。思わず口を衝いて出た言葉であることは、ワナワナと震え続けている彼女の様子を見れば明らかであった(つづく)。(D)
銀河の月8日/KIN7 青い共振の手
*この文章は、『13の月の暦』でKIN178(9・鏡)の日(2017.11.17)に体験した出来事をまとめたものである。
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