マヤ暦「赤・白・青・黄」の起源
年度替わりで新しく何かを学ぼうという方も多い季節なので、久々に「マヤ暦○○の起源」シリーズで注意喚起をしたいと思う。というのも、日本で「マヤ暦」と呼ばれているものの殆どは、古代マヤ文明で用いられていた暦でもなければ、現代の先住民が使っている暦でもない、認定講座商法用のまがい物だからだ。
そう言われても、予備知識のない状況で「あなたなのマヤ暦でのお誕生日は…」なんてことを友達から聞かされたら、「へー、そうなのね〜」となるのは自然な事。マヤ暦だと信じ込んで伝えているその人も、別に悪意がある訳ではないのだから(大抵は良かれと思ってやっているはず)、話題のひとつとして話を聞いている分には問題ない。
だが、代金を払って講座を受けたり、資格を取ろうとしたりするのなら、実情を知っておいた方がいい。大枚叩いてから「何かおかしいぞ」と気づいても、契約書にサインさせられていて、それを口外できないまま泣き寝入りのような形になっている人が結構いるからだ(そんな契約を結ばされる時点で十分怪しいのだが)。また、入り口は軽いノリで始められるようになっているから注意が必要なのだ。
では、どこがまがい物で何がおかしいのだろうか?まず、人を鑑定したり人に教えたりする資格を持っているという割に、マヤマヤ言ってる人たちの多くは、マヤ暦に関する基礎的な知識を持っていない場合が多い。例えば「色と方位」に関して、碑文や絵文書に残されている情報を、まるで知らなかったりする。
もし、日付に関して「赤、白、青、黄」という4色で説明をしていたり、「青は西に対応する」などという説明をしていたら、それはもうマヤ暦ではない。証拠として、誰でも手に入れられる一般書から関係個所を抜粋してみよう。まずは『図説 マヤ文字事典』から。
《黒は死と関連づけられ、西は死の方位と考えられた》
もう一つ、『マヤのリズム』執筆時に大変お世話になった、国立民族学博物館名誉教授・八杉佳穂先生のご著書『マヤ文字を解く』からも、関連部分を抜粋してみよう。
《八一九日暦は、古典期マヤの碑文で、絵文書とおなじ方位と色の関係を記した最初の例である。八一九日暦から導かれた表3の関係は、マドリッド絵文書やランダの記述とよく一致しており、古典期からスペイン人の征服期まで、その連合は一貫してつづいていたことがわかる。たとえば、マドリッド絵文書の三十四ページには、西ー(黒)ーカワック、三十五ページには南ー黄ーカン、三十六ページには東ー(赤)ームルック、三十七ページには北ー白ーイシュが出てきて、表3の関係とあっている。》
表3は省略させていただくが、ポイントは遺跡の碑文でも絵文書でも、古典期からスペイン人の侵略が始まった頃までの長い間、一貫して「西は黒だった」という所だ。つまり、マヤ暦で日付や方位と関連づけられて「青」が登場することはないのだ。では、「青」はどこから出て来た話なのだろうか?
既に【マヤ暦「太陽の紋章」の起源】などにも書いた通り、日本で「マヤ暦」と呼ばれているものの殆どは、実は米国のホゼ&ロイディーン・アグエイアス夫妻が1990年代に提唱した『ドリームスペル(13の月の暦)』情報からの盗用なのだ。西が青という情報も、『ドリームスペル(13の月の暦)』発表以降にしか見つける事は出来ない。
認定資格を量産している複数団体のトップは、いずれも『ドリームスペル(13の月の暦)』の構造やデザイン、呼称などを丸パクリしながら、提唱者の意図とは全く違う説明を勝手に付け加えて「マヤ暦」と呼んでいるのである。しかも、『ドリームスペル(13の月の暦)』情報は今の地球に必要なものとして無償公開されているものだ。
この事実だけでも、「マヤ暦」と喧伝して高額な講座や資格認定商法を展開している連中が、どういう精神構造の持ち主なのかは容易に想像できるだろう。こうした背景を知ると、熱心にやり込んだ人(=時間もお金も労力も割いた人)ほどガッカリした気分になると思うが、それはよく調べないで手を出したことへの代償とも言える。運良く先にこの記事を目にした人は、本質に速やかにアクセスするそのセンスによって、銀河が無償で認定するガイドになれる資質があるかもしれない。
いずれにしても、同じような発信源から広がった同じような情報だけを鵜呑みにして、ニュートラルな感覚で切り口を変えて調べるという事をしなければ、他のどの分野でも同じような目に合うことになる。もし、この記事で初めて実情を知ったという方は、良い学びの機会を得たと思って今後に役立てて行けば、過程はどうあろうと、結果的には意義ある体験だったと思えるようになるだろう。
しかし、こうした背景を知っても尚、それを受け入れないまま誤魔化し続けたりすると、自分自身の心を騙し続けるだけでなく、無自覚に人を騙すような人間になってしまうかもしれない。結局、素直さと潔さだけが自分を前進させてくれるのだ。
尚、『ドリームスペル(13の月の暦)』に「青」が採用された経緯については、私の知る限りどこにも書かれていないのだが、提唱者のアグエイアス夫妻の経歴から、チベット仏教の影響があるかもしれない点については【風にはためくタルチョとドリームスペルの五色】という記事で指摘した通りである。(D)
太陽の月22日 11・魔法使い(KIN154)
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