重力を味方にするステップと刀法

剣武天真流本部では年に2回、通常の稽古枠とは別に会員向けのワークショップが行われていて、本部正師範が順番に担当する事になっている。10/5(土)に行われたワークは、「重力を味方にするステップと刀法」というテーマで私が担当したのだが、伝える場面でちょっとした気づきがあったので、それをメモしておきたいと思う。

体技の世界は、実際にやってみせて「あとは自分で掴め」みたいな所がある。実際、究極的にはそれしかないようにも思うが、それでパッと分かる人は相当限られていて、多くの場合、何の手がかりも得られないまま時間だけが経過して行くか、誤解に満ちた勝手な捉え方をして本質から外れて行くのが関の山、という感じがしないでもない。

ワークショップのひとコマ

一方で、教え過ぎの弊害というのも確かにあるから(例えば自分で探求し発見するプロセスが失われる等)、何でも手取り足取り教えるのが良いとも言えない。しかし、学ぶ側の立場からすると、何か手がかりは欲しいもの。それがあれば、たとえその時点では分からなくても、次の展望が少し見えてくるので、学び続けるモチベーションにはなる。

今回のワークも、そういう意味でのヒントになればと思って、体の使い方に関していくつかの新しい試みをしてみた。だが、刀の重さを活用する動きを体感してもらうために準備したある手順を実際にやってもらったところ、殆どの参加者が私の想定とは違う動きをして、「あれ、何で?(笑)」となる場面があった。

予め自分の体でシミュレーションしておいた上での事だったので、最初は何故なのかが分からなかったが、その場で、自分も一緒になってもう一度その動きをやってみた事で、指示の出し方に問題があった事に気付かされた。そこで、ある条件を守るよう指示すると、想定していた動きが少しずつ出始めた。私はその条件を無意識的に守っていて、自覚が無かったのである。

ワークショップのひとコマ

同じ「重さを活用する動き」でも、「優先する条件」を変えると全く違った動きが生じて来る事に気付けたのは、私にとって大きな収穫だった。それは、ある条件を加えたり外したりすることで、それまで無意識的だった動きが自覚できるようになる、という事を意味しているからだ。

今回のワークのポイントをひと言で言えば、「直筆中鋒(ちょくひつちゅうほう)」という事だったかもしれない。天真書法塾の大基本とも言えるこの要点は、剣武天真流にも通じるものなのである。

余談だが、この日は二子玉川の花火大会があって、例年通り駅周辺は大混雑に見舞われていたようだが、ちょうど時間帯がワークショップと被っていたので、私はほとぼりが冷めた頃に帰宅することが出来た。

ドーン!という花火の振動を体感できなかったのがちょっとだけ残念ではあったが、ワーク終了後に食事をしながら感想を伝えて下さった師範方からの応答は、花火以上に心に深く響くものだった。感謝である。(D)

電気の月21日 12・犬(KIN90)

*剣武天真流については『「天地人々ワレ一体」宇宙ととけあう究極の心法』に詳しく書いてあります
*トップ画像は2018年演武会のもの(撮影:掘誠)

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