「毎年、あなた方が健やかでありますように」
普遍的な美を感じるものに人は心を奪われる。たとえ文字として読むことができないとしても。
秋に京都で行われるアラビア書道作品展に向けて、現在作品を制作中。ディーワーニー書体でこの美しいカリグラフィーを書いてくださったのは、アラビア書道家の本田孝一先生。「毎年、あなた方が健やかでありますように」と書かれており、こちらをお手本に練習を進めている。
アラビア書道協会のテキスト(本田孝一編)によれば、「この表現はイスラム世界で、例えば、ラマダーン月(断食月)やその後のイード・ル・フィトゥルと呼ばれる祝祭の時に人々が祝祭への喜びを表して互いに交わす挨拶です。
その他、個人ベースでは、誕生日のお祝いの言葉としてや、日本などでの〈明けましておめでとうございます〉にも使うことができます」とある。つまり、毎年規則的に来る祝祭で交わされる〈おめでとう〉の意味。
毛筆で筆勢を出すことに慣れてしまっている私の手には、アラビア書道の竹の筆は、何年経ってもなかなかフィットしない。毛筆でタブーとされていることをしない限りは、竹の筆で自在な線を描くことはまず不可能だ。けれども私にとってはそれが良い。一方でタブーとされていることを堂々と冒すのはとても楽しく、知らない間に凝り固まったものを柔らかくして、まったく違う世界を経験させてくれるからだ。まだまだ形にならないし、何年経っても初心者の域を出ないが、私にとってはいつも有難いチャレンジなのだ。
さて、奇しくも現在はラマダーン月(断食月)。そして今日「青い電気の猿」は本田先生の銀河のお誕生日である。「毎年、あなた方が健やかでありますように」というご挨拶がぴったりではないか。(L)
スペクトルの月23日3・猿(KIN211)
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